ナオミ・クラインの新刊書。資本主義の害毒

日本が直面する貧困、格差、生活保護の切捨て、生活の質、幸福度の測定、環境、エネルギー問題、異常気象、規制緩和、遺伝子組み換え食品、地産地消、ブラック企業、国際貿易、TPP秘密交渉、戦争、(非)民主主義などの諸問題をよくよく考えると、資本主義とグローバリゼーションという大きな問題に行きあたるように思う。

これらの問題を考えぬかずに、からまりつながる複雑なシステムの全体像をさぐり、解決策をデザインしていくことはむずかしい。ややこしいが、お金がつくられるしくみもわからないと、いけない(ビデオを参考にしてください)。

資本主義やグローバリゼーションの泰斗(頭をよぎるのは宇沢弘文 、ギー・スタンディング)にはスーパースター(学者やジャーナリストのレベルで)も多いが、私が今、注目しているのは、サスキア・サッセンとナオミ・クラインのふたりだ。

今月9月にクラインの新刊書「This Changes Everything <資本主義>対<気候変動>」が発売したこともあり、彼女の短いインタビュー記事を訳してみた(ブログ後半。左派への5つの大事な教訓。ナオミ·クラインの新刊から)。読みやすくするための工夫をしたが、誤訳や改良する点があれば、指摘していただきたい。

クライン氏、いやナオミさん(真率な彼女に親近感を感じる)の視点をまとめると次のようになる ―― 「気候変動」は待ったなし、先送りできない問題となってきた。だからこそ、地球温暖化問題は社会を変える草の根運動の土台になりうるだろうし、それは環境問題だけでなく、(日常生活で必要な様々なサービスの)民営事業から公営事業化への再転換により、経済格差、不公平などの問題を解決する糸口になる。

右派が気候変動を否認し続けてきたのには、理由がある。異常気象を認めてしまえば、今のように経済を市場まかせに放置できず、政府介入、事業の規制化、罰金などを意味し、利潤追求にきゅうきゅうとする資本主義の原理(規制緩和、組合つぶしなど)の否定そのものにつながる(下の記事参照)。問題の根幹にあるのは、二酸化炭素や環境でなく資本主義なのだ。

カーディアン紙のインタビューでは。近年、彼女は地球温暖化にかなり絶望しかけていたという。『ショック・ドクトリン――惨事便乗型資本主義の正体を暴く』の後、講演依頼などで世界中をとびまわり、多忙をきわめた。新刊書が世にでるまでに、不妊治療、流産、待望の妊娠、出産、その後、甲状腺がんの診断/手術を経験したという。その逆境のなかで完成した本は、さらに凄愴味をおび、毅然とした彼女のやさしさや正義性がひきたつことだろう。環境・気候というテーマは、国境をこえた人々の関心の接着剤となるだろうか?(先々週、彼女の新刊を入手した。じっくり味わいながら読んでいる。)

同時に、ジョセフ・スティグリッツの「グローバリゼーションの悪い面について」を参照されるのもいいと思う。

株処分運動については

左派への5つの大事な教訓。ナオミ·クラインの新刊から。

資本主義と戦わずして気候変動と戦えない、とクラインが新刊書「This Changes Everything」で主張。(8月21日、2014年)

前著「ショック・ドクトリン」(2007 年)と「ブランドなんか、いらない」(2000年)で、カナダ人作家で活動家でもあるナオミ・クラインは、新自由主義「ショック療法」、消費主義、グローバリゼーション、「災害資本主義」などについて論じ、過去50年にわたり、経済的不平等と環境悪化の劇的な上昇をまねいた力について、広範囲にわたり記した。だが、新刊書「This Changes Everything」(9月16日店頭へ)では未来に目を向け、気候変動の危険性が高まる中、大惨事を避けるには、今、ラディカルな行動をおこすことが求められているとクラインは説いている。脅威の緊急性を指摘するのは、確かに彼女だけではない。だが、他者とちがうのは、気候変動問題の根にあるのは炭素でなく、利潤追求のためにわれわれをいやおうなく環境ハルマゲドンへ陥れようとする資本主義にあるという彼女の論考である。新刊書は一度精読(あるいは二読)する価値が十分にあるが、いくつか要点だけをとりあげてみよう。

1.バンド・エイド解決法は使いものにならない

「今、私たちを救えるのは、大規模な社会運動だけだ。なぜなら今の(抑えられてない)システムはそこに向かっていることを、私たちが知っているのだから。」

気候変動をめぐる話しあいの多くは、クラインが見くびる「バンドエイド解決策」に焦点をあてている。いわば目を見はるような革新技術、キャップ・アンド・トレード方式による排出量取引制度、あるいは天然ガスなど「地球にやさしい」といわれる代替手段は、つまり利益にやさしいごまかしに過ぎない。クラインにとって、このような戦術はあまりにもささいで、すでに手おくれなのだ。彼女は企業がらみの気候変動対策を延々と批判しながら、もうかる「解決策」は多くのシンクタンク(およびその企業後援者)がうちだしたもので、実際には問題の深刻化にしかならないと論証する。たとえば、炭素排出枠制度はメーカーがより有害な温室効果ガスをだしてもよいと認め、その割り当て量を下まわれば余剰分の排出権は払いもどしされるという、ゆがんだ動機づけがおきていると彼女は論じる。その過程で、炭素取引制度は企業が数十億もうけるのを資する、つまり地球破壊をして利益を得られるようにしてある。これに反し、われわれは市場原理主義から自由になり、長期的計画をすすめていく必要があるとクラインは主張する。すなわち事業規制の強化、課税の強化、政府支出を増やし、主要インフラを私営から公営化/公有下に転換しもどす必要である。

2.世界を直すのでなく、自分たち自身を直す必要がある

「地球は私たちの囚われ人でもなく、患者でもなく、マシーンでもなく、巨きな怪物でもない。地球こそが、私たちの世界すべてなのです。そして地球温暖化を解決のは世界を修正することでなく、私たち自らを修正することなのです」

クラインは、ジオエンジニアリング(地球工学)に一章をあてている。地球工学とは、たとえば、太陽光を宇宙に送りかえすために反射材料で砂漠を覆ったり、地球に到達する熱量を減らすために太陽の明るさをしぼり調光するなど、地球そのものを変えることによって地球温暖化防止を目ざす学究分野、それをささえる適材科学者グループ、資金提供者、メディアの大物などをいう。

政治家や世界の多くの人々が、地球をめぐる発案された科学実験に関する環境・健康・倫理的問題を懸念してきた。クラインも、複数の国が同時にプロジェクトを立ちあげ「フランケンシュタインの世界」を生みだそうとする、そのゆくすえに警鐘を鳴らしている。これらの「テクノフィックス」は環境の安定性を回復せず、かえって地球のバランスをくずすだけで、一つの問題の解決があらたな課題を生じ、さらなる「修正」を要する終わりなき連鎖につながると彼女は論じる。「われわれの生命維持装置である地球が、猛威をふるうモンスターに変貌しないように、365日24時間、生命維持装置につながれたようになるだろう」とクラインは記している。

*「テクノフィックス」(人間よりは器械頼みの解決法、という意味合いを感じます)

3.「善意」の企業資金に頼れない

「多くの進歩派たちが、気候変動論争の外に身をおいてきた。ビッグ・グリーン・グループ(慈善寄付金が山ほどある)が問題解決にとりくんでいる、と彼らが見なしたことも、その理由の一つだろう。これは結局、重大な間違いだった」

地球温暖化との闘いをめぐり、ビル·ゲイツやヴァージン・グループのリチャード·ブランソンなど「緑の億万長者」が、企業と大手環境団体とが連携をとり資本主義をとりいれるやり口を、クラインは鋭く批判する。資本主義そのものが気候変調の主因であるのに、企業や億万長者が利潤よりも地球を優先すると見こむのは、無意味だと彼女は言う。たとえば、ゲイツ財団は気候変動の闘いのために大手環境団体に資金援助をしており、2013年12月の時点で、BP(英国企業。国際石油資本)とエクソンモービルに少なくとも12億ドル投資している。また大手環境団体が企業基金に頼るようになると、企業の方針をかばい始めるようにもなる。たとえば、シェル、シェブロンやJPモルガンなどフラッキング推進派(注。シェールガスなどの採掘で、岩を水圧で破砕する)の企業から数百万ドルの資金提供を受けているthe Nature Conservancyやthe Environmental Defense Fundなどの自然保護や環境基金の組織は、石油や石炭をよりクリーンな代替燃料としてすすめている。

4.株を売却し、再投資をする必要がある

「(化石燃料をビジネスにする企業の)株処分の一番の威力は、シェルやシェブロンに短期的な財政的打撃を与えるのではなく、それら企業の開発事業をめぐるソーシャル・ライセンスをむしばみ、排出削減策をまとめて導入するために政治家への圧力を強めることだ」

株処分運動の批評者たちは、株式売却をしたとしても、汚染者である企業のボトムライン(税引き後当期純利益)への影響を最小限にとどめるだけだと論じる。が、クラインはこのような論難は的はずれであるとし、カナダの売却活動家キャメロン・フェントンを引用している――「われわれが化石燃料会社を破産させるとは誰も思ってないだろう。が、われわれにできることは彼らの経営/評判破たんであり、政治的な権力をとりあげることだ」より大事なことは、株売却は再投資の扉をあけることでもある。エクソンモービルやBPからとりあげる数百万ドルで、緑のインフラ整備や、経済を土地柄や地域性にあわせ、地域の活性化にまわすことができる。すでにいくつかの大学や慈善団体、年金基金や自治体は、この申し立てを受けいれており、米国の13大学、北米25都市、約40の宗教組織や複数の主要財団は、化石燃料企業の株や債券を売却する約束をした、とクラインは報告している。

5.気候変動に向合うことが、他の社会・経済・政治的問題にとりくむ機会となる

「気候変調を否定する人たちが、地球温暖化は富の再分配をねらった陰謀であるというのは、彼らが妄想にとらわれているというだけでなく、彼らもそれを気にとめているからだ」

「ショック・ドクトリン」でクラインは、企業が利益のために、いかに世界中の危機を悪用してきたかを明らかにした。新刊書の「This Changes Everything」では、気候変動の危機が、広汎な民主的行動を呼びさます役割を果たしうる、と筆者は論じている。たとえば、2007年の竜巻はカンザス州グリーンズバーグの大部分を破壊したが、町は上からの命令で動く方法をこばみ、地域密集型の再生にむけたとりくみをすすめ、それが民主的な町政参加をはぐくみ、環境にやさしいあらたな公共建築物の造設につながった。今日、グリーンズバーグは、米国で環境に最もやさしい町のひとつとなった。人々が環境にやさしい社会を構築するために、気候変動で結束できることを、この事例が示しているといえる。気候変動は、根本的な経済変化を加速させるだろうし、また加速させなくてはならない。その変化とは、消費を減らし、国際貿易を減らし(経済活動をより地域型にするためにも)、私的投資を減らし、グリーン経済に必要なインフラ整備のための政府支出を増やすことである。「これらをまとめる含意は、(富)の再分配ということだ。より多くの人たちが、地球(の環境再生)能力内で快適にくらせるようになるために」とクラインは結んでいる。

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