日本礼賛 と 星の王子様のうぬぼれ男(1)

「日本すごい!」本が、ブームなんだそうですが。

まず芥川賞作家のツッコミを、読んでみてください。


このごろ私が、「気色わるゥ」

と思ったこと、二つ三つ。       (中略)

しかし「日本人上等論」を読んで(それみい、やっぱりや)などとにんまりしてるとえらい目にあう。日本人をほめられてワルイ気はしないところが、要注意のこわさ、気色わるさである。戦争おっぱじめる、軍隊を組織して軍備を強化する、ということをもくろむ手合いはまず、国民の士気と民族意識をたかめ、(それみい・・・・・)という優越感を植えつけようとする。気色わるゥ。

田辺聖子「気色わるゥ」

女の口髭 文春文庫 1987年 116~118頁


社会が出すサインを、まず直感で感じとるのが優れた作家なのでしょう。

日本礼賛ブームについて考えるようになり、センの「アイデンティティと暴力」を思い出し、上の80年代に書かれた「気色わるゥ」という田辺さんの警告に背中をおされて、英文エッセイを書きました。

おりよく個人サイトmizohata.org  も出来上がりましたので、その幕開き第一号として、この小稿を載せました。エッセイは、日本人読者には目新しくない部分も多いかもしれませんが、次の3点は伝えたいのです。

  1. ヘイト・スピーチなどとは、正反対のケイパビリティ(自由)という概念
  2. 安保法では人がたずさわる事がらが最優先されるべきなのに、人よりも国のほうがなにやら大事なように、取り違えている日本の安全保障。セン教授と緒方貞子さんの協力で、Human securityという概念を国連で推したのは、日本(小渕政権)でした。
  3. 麻生太郎さんが「日本は一国家、一文明、一言語、一文化、一民族。他の国、探してもございません」とおっしゃったそうですが。さすがはアイデンティティの複数性を否定し単一性を強要するウルトラ・ナショナリスト。元凶は、アイデンティティはたった一つであるというスリコミではないでしょうか。一面的な属性だけをすくいあげアイデンティティとし、「異質」な人たちを「反日」「在日」「売国奴」「非国民」と排撃し、それらの正否で二項対立と分断と脅威をあおり、「憎悪」と「愛国」をコインの裏表のように醸成する嫌中・嫌韓と日本礼賛ブーム。怒りや暴力や称賛の対象は、恣意的な操作でいくらでも変えられてゆくことでしょう。(このブームは星の王子様の、うぬぼれ男・政治家?のようです。人に称賛されることで実体のないパワーに酔ってうぬぼれてるうちに、陰で操る真の支配者たちのいいなりで搾取されてゆくのでは?)

    「神は偉大なり」と叫んでから自爆したり古代遺跡を破壊するテロリストのアイデンティティや、日本礼賛ブームを考えるとき。センの理説「アイデンティティと暴力」で、今の欧州や日本の状況を理解できるのではないかと思います。

ヘイト・スピーチする人たちにもひとこと。彼らは、中国や韓国がどうもお好きじゃないみたいですが。唯我独尊。うぬぼれを意味する漢字や、日本の代表的な食文化、お味噌汁に入っているトーフは元々どこから来たものだと思ってるんでしょ?漢字という共通のツールで、中国人や韓国人の友人と対話して遊ぶとたのしいですよ。ちらっと見ただけで共通の大きなアイデンティティを感じられるのは、漢字のおかげですね。

「中国が攻めてきたら、どうするんだ」と問う人も多いようですが。戦争でもめて人が死んだら、国も愛国もなにも、すべて元も子もなくなるじゃないですか?自分たちに一番身近な安全・安心について、まず考えるべきじゃないでしょうか?

英文の小稿はそれまで書きためていたものを寄せあつめ、あたまをカッカさせて一週間で書きあげ、その後一ヶ月以上放っておきました。「沖縄」と「福島」にふれるところ以外は、楽しみながら書きました。ところてんのように、ツルっと読めます。ぜひ、お読みください。mizohata.org

(追記。今週のヨーロッパは、パナマ文書の話題で、上へ下への大騒ぎでした。ルクセンブルグのコミュニティ紙さえも、「パナマ・ペーパーズ。世界に激震をもたらす」という見出しで、ラジオのニュースなどもそれで、もちきりでした。

今日はどこの首相が辞任するのだろう、どんな大物が逮捕されるのだろう、とハラハラドキドキ。スキャンダルに対するヨーロッパ市民の関心はものすごく高く、人々の怒りとプレッシャーで社会が動くのを目の当たりにする毎日でした。経済が逼迫しているフランス政府は、(不正行為がバレた大富豪や有名人や権力者からの)臨時収入源を見つけて、ホクホクしているようでもありました。

その激震ニュースをひかえめに報道する米国メディア。最初は、完全無視の日本メディア。ヨーロッパとの落差で、よけいに不気味でした~)。

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